セルフ・キャリアドックの有効性
経営者と個人は一緒にはたらく仲間

──セルフ・キャリアドックをやっていると、高橋先生がおっしゃるように、経営者の人たちから「社員が言うこと聞かなくなっちゃったらどうするの?」って強い口調で言われることが多いです

これが会社の未来をつくりますって、なかなか伝わりづらくって……。

やはり、旧来の労使関係の発想から抜け出せていないのだと思います。そもそも経営者から見て、会社で働く社員は「労使」という関係以前に「一緒にやっていく仲間」のはずです。

一緒にやっていこうって決めた仲間がもし「方向性が違う」という日が来たら…「じゃ、違うんだったらしょうがないね」と認めて別れるしかないと思います。「辞めていくから困る」という考え方は、従業員をただの「労働力」だと思っているのかな…と、私はちょっといぶかしく思ってしまいます。

工場の生産部門のようなブルーカラーならば、その考え方は理解できますが、思考労働が増えていく今後の社会では通用しなくなると思います。

みなさんが仲間から「一緒にやってきたけど、方向性違うんだ」と言われたら「いやいやお前辞めるのは許さん」と言えるでしょうか? 考え方や方向性が違うからといって「そんなのは理由にはできない」と言うでしょうか? もし、そう言って半ば強制的に会社に残ってもらったところで、その人はこの先、会社のために頑張ってくれて成果あげてくれるのでしょうか…。

──そこに経営者のジレンマがあるように思うのですが、企業はどうすればよいのでしょうか

まずその会社のパーパス、たとえば経営者の夢を語るとか、どんな社会貢献をしているのかを従業員に本気で話す必要があるでしょう。それに気づいていない従業員も多くいるでしょうし。「なんのために私たちはこんな苦労して働いているのか」を共有しないといけないと思います。

「キャリアオーナーシップ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、「キャリアのオーナーは自分であり、自分自身でキャリアを決める」という意味合いがあります。さらに踏み込むならば「キャリアオーナーシップ」は、自分の責任の下で働くことを意味するので、従業員も「経営者」と同じような感覚に近づくことになります。

だとするならば、従業員と経営者は、共同経営者の関係に近く、ともにこの世の中でどのように働き、何を提供するかを話し合い、そして一緒に働けるのかを判断しなければなりません。でも日本人って、「雇われる働き方が一番よい」と、思い込んでいる人が多いですね。

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